2015年8月13日

雅あかまろう展 (F2) ギャラリー白  3/16-21

写真を基底にアクリル絵具、油彩、エナメル樹脂そしてCGコラージュや鏡を張り付けるなどして絵画が制作されている。基底となる写真には奇妙な枝ぶりの樹木や深遠な森が写されている。表面は削られたり一部切り取られたりと加工されている。その上には着彩、樹脂が施されさらに鏡を置いた作品などもある。作品を読み解くことは困難になり雅氏に制作や動機を聞く。撮影された場所は沖縄、八重山などの樹林で撮影された場所は「聖なる場」だという。そこは樹木の姿が他の場所とは異なるという。そのような場所を探し体験しその身体経験を絵画として構築している。

雅氏がそこに佇むことで感じるのは、身体全体の感覚が活性化され「生」の力が増幅するという。その場所にあるすべての生物、鉱物、気体、液体、光、闇などが緻密な関連により場が生成されているのだろう。見えない聞こえない大量な「何か」がその場所で交換しあっているのだ。それは肉体にも共鳴し活性化するのかもしれない、と雅氏の話を聞いて考えた。

その「生」の執拗な確認は雅氏の阪神淡路の震災からだという。そこで経験した「理不尽な死・偶然の生」その体験を絵画制作とし出来事を考え続けている。

作品の一つに複数の鏡を貼った作品がある。絵画に展示された環境を映しこむ効果のある作品だが、鑑賞するとき鑑賞者の姿が絵画の要素として映り込む。鑑賞者により姿を変えるこの作品に感想を共有することはできない。その鑑賞経験が「理不尽な死・偶然の生」のジレンマと繋がるように感じられた。

報告 教養課程講師 加藤隆明 協力 芸術計画学科合同研究室