今回の個展は、持田先生の20代から今日までの作品が展示されていた。
20代のエッチング版画作品2点と絵画1点を見る。
エッチングで制作された作品は美術に向き合い始めたころの自画像である。
太い強い書のような線で形作られた所と目と唇にある滲みのないシャープな線とで構成されている。
正面を向いた顔は眼光鋭く鑑賞者を見つめる。
時代の気分と20代のエネルギー、そして美術に向かうことを決断した力強さが伝わる自画像である。
もう一点は、円と柔らかな曲線で構成されたシュールでもあり装飾的でもある作品である。
画面の多くを占める円はその内に植物や生命的なイメージで構成されている。
そして外は獣の毛皮のようなイメージに包まれている。
画面下には強く太く短い曲線があり、そのため円が宙に浮いているように感じる。
面においては複数のトーンの配置により奥行きと運動が感じられ、全体的に自画像とは異なり穏やかな時間と空間を感じることができる。
絵画を見る。画面は厚く塗られザラザラとした皮膚感を感じる。この画面を厚く作る絵画は当時の特性でもある。それはイメージより物質性を探求してきた美術の時代でもあった。厚い表面に描かれたイメージはエッチング作品と共通するものがある。プリミティブなイメージと共に鈍い赤が印象的である。この作品からは神秘的で魔術的なものを受け取ることができる。
報告 教養課程講師加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室