陶で制作された正多面体の作品である。二つの正多面体が二重の内と外を作る。
制作過程を南野氏に聞く。
―全体を構成しうる部分の形をパソコンで設計する。そこから型を制作、正二十面体に必要な個数を陶土で作り焼成し構築する。―
続いて彼は「この作品は誰にでもできる」と語った。一定水準の技術と構想力がある人ならば誰にでもできるということである。「私にしかできない」作品ではない、ここにこの作品の重要で魅力的なところがある。私たちが理解している「土と炎の芸術」その背後にある「日常的世界に用としてある陶器」の物語が浮かび上がる。陶器は工房にて職人たちの分業による大量生産の歴史があり、純粋芸術とは異なる。展示された作品は、そのような陶器の物語に近接しながらあるいは交差しながら現代の陶器作品に仕上がっているのだ。南野氏は重要なことを話していた。
―作品は自身がすべて作れる範囲で制作されている。パーツも自分が維持できる大きさと重さ、展示構成も一人で制作できるヴォリュームである-
ここに何かしら工業製品化可能なシステムと自らの肉体が関与せざるをえない接点が見えてくる。「用として大量生産されている陶器の世界」と「子供が孤独に粘土遊びする世界あるいは純粋芸術」が交差されているように思えた。
報告 教養課程講師 加藤隆明 協力 芸術計画学科合同研究室