2013年5月4日

上村和夫展 (元美術学科教授) ギャラリーHOT

昨年11月19日から12月1日にかけて、 上村和夫先生(元美術学科教授) の個展が行われました。
 
少し離れたところから鑑賞すると淡くイメージが描かれた抽象絵画のように見えたが、近づくと画面いっぱいに無数の数字が描かれていた。数字や記号をモティーフにした作品は、ネオダダのジャスパー・ジョーンズやコンセプチュアル・アートの河原温が有名である。そのジャスパー・ジョーンズの作品をみた時、数字の表現があれほど美しくなるのかと感じたことが思い出された。

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離れたところから見た作品は、背景の色彩から淡くぼんやりとしたイメージが浮かびあがり霞のような空間であった。しかし画面に接するとそこには無数の数字が描かれていた。遠近の差により、ぼんやりとした画面を構成していたのは曖昧なイメージではなく記号であったということに驚く。

次に鑑賞者が考えることは、この数字に何か意味があるのかということである。そこに作品を見る人の興味は集中するだろう。無意味な数字の列か意味があるのか謎解きのような鑑賞が始まる。近年私たちは大きな社会的出来事を数字で記録記憶するようになってきた。そのためこの数字が意味を持たないものとは考えないだろう。

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数字の意味を先生から聞かせてもらった。非日常の出来事が起きた年日だそうだ。描かれているのは出来事を記録した数字である。その数字が延々描かれている。非日常体験とはその日その時をおおきく意識させられる時であり、日常とはそのような関係のことなど無自覚に、そして自明のことが透明になっていることである。

上村先生はそのような出来事を、画面の上に極細の面相筆であたかも写経のように数字を記録していく。それは「鎮魂の絵画」のようでもあった。

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室