今日学内のあちらこちらで、大きな紙に鉛筆でゴリゴリと作業する在校生の姿を見かけました。これは「造形芸術演習?」という授業の受講生たちの様子です。
芯の断面が8?×4?の特殊なスケッチ用鉛筆を使ってB1サイズのケント紙にゴリゴリ。学内の壁面や道のコンクリート部分、タイル部分、グレーチング、マンホール、側溝の蓋などなど様々な面に紙を押し当て、鉛筆でそのテクスチャーの表情を写しとる「フロッタージュ」という作業です。ちなみに鉛筆は6B。
今日作業していたのは1年生。学内に放たれる前に教室で担当の金田惠美子先生にレクチャーを受けてからスタートです。教室では今までに授業内で制作された参考作品を見て自分達が今からどんな作業をしようとしているのかをイメージします。先生が教室の柱を使って小さな紙にデモンストレーションをして作業の注意点を伝えました。
参考作品は一見黒い紙かと思えるほど描き込まれており、黒光りする作品の数々は迫ってくるような力を感じます。様々なテクスチャーの表情を重ねてコラージュしたもの、写真のような立体感があるもの、1種類のテクスチャーの表情のみで全体を画面構成したものなど、表現は驚くほど多彩です。
こんなところにこの演習の狙いがあるそうです。「下絵の線を描くためのもの、間違えば消せるもの、そんな安く見られがちな鉛筆の価値を払拭し、鉛筆でここまで表現できるんだ、ということを再確認して欲しい」と先生はおっしゃいます。「単純な作業を続ける中で、鉛色の美しさ、その魅力に気付いて欲しい」。こうして作品を見るだけでも鉛筆の価値観が変わります。鉛筆も絵具と同様、これだけ多彩な表現ができる素晴らしい画材であることを実感できます。
今日作業していたクラスの方々は、デザイン学科の方々だったので、『消火栓』など文字が施されたものをゴリゴリする人が多かったように思います。以前は「和泉 300 せ ○○○○」などナンバープレートやメルセデスベンツのマークなどでゴリゴリやってくる学生もいたようで、先生は事前の作業説明の中で禁止事項として「ナンバープレートではゴリゴリしないこと」などを伝えたそうです。守衛さんに注意されてしまいます。
また車の往来もあるので安全のため「音楽を聴きながら作業しないこと」「道の真ん中で作業はしないこと」なども伝えてあるそうです。でも皆がやらないとなるとその道の真ん中のマンホールはレアなテクスチャーということになります。やっちゃう気持ちはわかりますが車には十分気をつけて作業してくださいね。と、写真を撮らせていただいている間にも、トラックが近づいて来てます!
「どんなイメージで構成しようか」と考えながらも、どんなテクスチャーの表情と出会えることができるかで作品の方向性は刻々と変化します。日頃、意識することがない壁や道のテクスチャーにどんな表情が隠れているのかを発見、確認しながら、自分のセンスで構成していく。その即興性もこの課題の面白味ですね。授業をとっていない人でも一度やってみてはどうでしょう?
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