2008年7月6日

背骨のパトス

昨日と今日、東京国際フォーラムでは「ダイゲイフィルムアワード」が開催されていました。会場では大阪芸術大学出身の映画監督、石井裕也さん、柴田剛さん、元木隆史さん、本田隆一さんの4人にお越しいただいて上映会+トークショーが行われたようです。
あいにく東京には行けませんでしたが、本日、大阪でこれまた大阪芸術大学出身の松岡奈緒美監督の新作ドキュメンタリー映画を見てきました。松岡奈緒美さんは、山下敦弘監督(「天然コケッコー」「リンダ リンダ リンダ」)やダイゲイフィルムアワードの昨日のゲスト・柴田剛監督と同期なのだそうです。
背骨のパトス 松岡奈緒美 監督 花の鼓
本日の上映は2本立てで、2003年の『花の鼓』と今回の新作『背骨のパトス』でした。
とある方からの紹介でこの映画ことを知ったのですが、この世代の活躍中の監督の作品上映ということで「ダイゲイフィルムアワード」の2元中継大阪会場のつもりで「是非見ておきたいっ!」そう思って会場に足を運びました。上映開始の11:00直前に会場に到着し狭い階段を上がろうとするとき、小さなお子さんを2人連れ私の前を上がっていた美しい方が松岡監督でした。
上映前にスクリーンの脇で監督が挨拶されました。「・・・(前略)・・・、(普段生活していると世の中には)いろいろな肩書きがあるかと思います。でもその肩書きを忘れ一人の人間としてこの映画を見ていただければと思います。」 肩書き削除、準備完了。

『花の鼓』は、ご自身が体験された流産や旦那様の祖母様の死というエピソードをご自身の心情を赤裸々に語りながら、生きることの意味を考えていく様子を綴った作品でした。作られた演出がほとんどない「生き様」の力に圧倒されました。私にとって本当に衝撃的でした。ドキュメンタリーの映画をちゃんと見るのは初めてでした。いつもは流行りものの映画しか見ていないので、映画といえば華やか・ド派手・奇想天外なものばかり、それが映画だと勘違いしていた自分を少し恥ずかしく思いました。

続けて『背骨のパトス』が上映されました。『花の鼓』の続編ともいえる松岡監督の人生日記です。作品の中にインタビューの部分があります。『「背骨のパトス」のパトスって何?』、『「女としての私」「妻としての私」「映画作家としての私」とか言って自分の身の回りの様子を撮ってるけど、よくあるホームビデオと何が違うの?』どちらの質問も監督がどう答えるのか興味を持つシーンです。

その次に映像として自分が描きたいものは何か、そんな自問自答で出した「母としての私」が描かれていました。ちなみに「パトス」はギリシア語で「感情的・熱情的な精神」という意味で「ロゴス・エートス=論理」の対義語だそうです。監督はこの言葉を「衝動」のように捉えているのだといってました。
作品の中では、おそらく知人や友人と思われる方々のご家族揃った様子をたくさん編集して見せている部分があり、監督自身のナレーションで「不幸の形はそれぞれ色々あるけれど、幸せの形はどれもよく似ている」という部分がありました。何気ないシーンですがこの部分がとても印象に残りました。また監督ご自身が助産院で第二子を出産される様子を収めたシーンや二人のお子様がお布団の上で戯れている日常のほほえましいシーンなど「母として」幸せに感じるシーンがたくさん詰まった作品でした。ラストシーンはまさに「幸せの形」なのだと思いました。
最後に流れるスタッフロールの中に「架橋」「あつき」という文字を見付けました。ちょっと気持ちが優しくなったような気がします。(それが何故なのかは観てのお楽しみ)

上映終了後、松岡奈緒美監督と少しお話することができました。監督は「(この映画を観て)どんな形でも映画は作れるんだっていうことをたくさんの学生に知ってもらえたらうれしいです」とおっしゃっていました。お話どうもありがとうございました。

『背骨のパトス』は、7月18日(金)まで大阪市北区中崎町のプラネットプラスワンで上映中。
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