お伝えした本学大学院卒業生山中俊広さんが代表のYODギャラリーは今年1月のオープン以来、着実に実力を発揮されています。Lマガジン3月号では、関西で注目のギャラリーとして掲載されていましたし、7月の ART OSAKA 2008にも、さっそく出展されました。
そして、今回は、大阪芸術大学グループ 大阪美術専門学校を2004年に、同芸術研究科を2005年に卒業された杉山卓朗さんの「杉山卓朗展?Hyper-Geometrism?」[11月11日(火)→29日(土)]です。杉山さんは、2004年度 第16回 日中作品交流展に選抜され、訪問団の一員として中国(上海大学美術学院)へ行かれました。同行した大芸大生や短大部生とも意気投合し、貴重な経験をされたようで、今でもその時の皆さんと交流があるそうです。
杉山さんの作品を初めて見たのは、作品のポートフォリオで、日中交流展の作品や卒業制作展で優秀賞を受賞した作品等です。一見、CGかと見違うようなキューブの集合体ですが、フリーハンドで、しかも頭の中で考えたものをそのまま絵にしていると聞き、とても驚きました。しかし、良く見るとスケルトンの部分やキューブの組み合わせや影など、確かにCGでは逆に表せないファジィ(曖昧さ)な魅力に引きつけられる思いでした。
作品名:「無題」<卒業制作展 優秀賞受賞作品> 制作年/素材:2004年 /アクリル・パネル サイズ:高さ103.0×幅364.0cm
こうして、待ちに待った杉山卓朗展のオープニング・レセプション[11月10日]に行ってきました。閉じたキューブから、中身が気になりだしたとのことで、今回は開いたイメージになっています。直線から、本人が「R」と呼ぶ曲線も登場し、確かに進化しています。
作品名:「無題」(各)制作年/素材:2008年/アクリル・パネル サイズ:高さ90.9×幅72.7cm(各)
大作の「無題」は、圧巻です。今度はキューブが解体されているだけではなく、教室の壁や床が解体されて、建築物のパーツが複雑にしかも心地よく入り交じっている、そんな印象を受けました。その上、それがどこまでも増殖されて行くような感覚になります。全体的なダイナミックさにも引かれますが、一つ一つのパーツもとても魅力的です。
作品名:「無題」制作年/素材:2008年/アクリル・紙・パネル サイズ:高さ94.5×幅200cm
今回は、そのパーツを象徴した作品がありました。アルファベットの26文字を表現した作品です。コミュニケーションを表したくて取り組んだ作品だそうです。誰かをイメージしながらそのイニシャルを表したりと思い入れのある作品になっています。しかも原案は小さな紙に鉛筆で書いたものを部屋のいろいろなところへ貼っておいて、ふとした時に書き加え、書き直したりと結局、完成までには一年位暖めていたそうです。
作品名:「Alphabet」(各)制作年/素材:2008年/アクリル・紙・パネル サイズ:高さ27.3×幅22.0cm(各)
杉山卓朗さんのもう一つの魅力は、色彩の美しさだと思います。あまり色を混ぜたくないとご本人は言われていましたが、鮮明な、しかし優しさのあるとてもきれいな色合いだと思います。色の組み合わせも頭の中で考えたもので彩色して行くそうです。
三原色は好きな色だと言われていましたが、黒も使ってみたかったということで生まれた作品群が「パースのシリーズ」だそうです。これも定規を使わず、フリーハンドで描き切った力強さを感じます。作品の原点でありながらも今回は、最後に描いたところにまた意味を見出します。
杉山卓朗展のオープニング・レセプションには、2006年本学大学院修了 現大学院陶芸コース非常勤助手の金理有さん、2005年本学大学院修了町田夏生さん、2004年本学美術学科卒業 岡本啓さんを始めとした若手の作家さんたちがたくさん来られて、大いに盛り上がっていました。岡本さんに杉山さんの作品の感想を聞くと「絵画に男女の区別はないけれど、敢えて言うなら男らしい作品」とのことでした。論理的、幾何学的思考の所以でしょうか。地図が読めない私には到底できない発想です(笑)杉山さんに今後、どんな作品を制作したいかと尋ねたところ「平面を交えた三次元作品」も制作してみたいとのことでした。するとそういう気配を感じる作品が入口横の外壁にありました。細い木で組まれたキューブです。夜には人工的なライトアップによって計算された影が出現しますが、日中は、陽の光の射す角度によって表情を変えるであろう地球規模の作品に成り得る面白さを感じました。この作品は、日を追う毎に増殖(継続制作)されて行くそうです。ギャラリーに足を運ぶ日にちや時間によって、どんな影を織りなすのか本当に楽しみです。
岡本さんや町田さんと一緒にこの外壁の作品を拝見しながら、もう少し見せ方を工夫できたらもっと良いのに・・・という私の勝手な発言を聞き、岡本さんは、カッターやくぎの種類など、杉山さんに技術的なアドバイスをしてくれていました。こんな風に作家同士のコミュニケーションや交流は、とても意義のあることだと思います。大芸大の中での他学科との交流だけではなく、大芸大グループにも輪が広がっての交流は、とても嬉しいことです。杉山さんの作品が目指した「コミュニケーション」もさっそく体現でき、29日までの会期の中で、より素晴らしい作品空間となることでしょう。杉山さんには、きゃしゃな外見と反対にコンプレックスや挫折をバネにして、成長し続けて行く芯の強さを感じます。写真や文章では現せない杉山卓朗の世界観を是非、多くの皆さんに体感してもらいたいと思います。
杉山卓朗展?Hyper-Geometrism? 11月11日(火)→11月29日(土) 11:00?19:00 日・月曜日 閉廊
YOD Gallery http://www.yodgallery.com/
投稿者:図書館事務室
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