2011年12月11日

林十三 個展   番画廊

katou 1208002.jpg林十三さん(美術学科専攻科81修了)の個展が10月31日から11月5日まで行なわれました。

林さんの絵画制作の方法は、黄味がかった和紙を二枚重ねキャンパスとして使用し、それを寝かした状態で5つの色彩を順次塗りながら、時々水とブラシで画面を擦り、また色彩を置いていくということを繰り返しながら完成させていきます。

 

katou 1208005.jpgこれは1940年半ばからフランスから興ったアンフォルメル(非定型の芸術)やアメリカから発生したアクション・ペインティング(運動や身振りの抽象絵画)などを源流とする抽象絵画に思えます。しかし、これなの絵画と根本的に異なる事があります。アンフォルメルやアクション・ペインティングは第二次世界大戦後人間の不条理を感じた芸術家達が理性的でクールな作品に疑問を抱き、人間のイメージ像の破壊であったり、即興性を重視した制作方法で自らの存在の探求や触覚を中心に置いた身体感覚での絵画制作が行なわれていました。
そこに「行為や過程を重視した芸術」が生まれてきたのです。

 

katou 1208001.jpg林さんの作品はこのような制作方法を取りながらも、社会状況も時代も文化も異なるこの日本で制作を続けているのには別な内容があると思われます。
作品にタイトルはありませんでしたが、タイトルとして共通しているのが「表層の言葉」です。

 

katou 1208000.jpgこれは制作方法の過程が「深層の言葉」であり、5色の色を重ねながら破壊していく過程に、色彩同士が反応し新たな色彩が発生するのを捉えようとし、そしてそこに新たな絵画言語「表層の言葉」が表れた時、手を止めるということです。作業手順は類似していますが内容は異なると思います。ヨーロッパ、アメリカのそこに行き着く歴史を考えると林さんの作品はキャンバスや絵の具、素材の状態に制作姿勢を委ねながら、作り手と作品の関係を対等に捉えているように思います。
私には事の在り様を捉えようとし自然を支配しない世界観が、林さんの作品から見えてきました。

写真はギャラリートーク中の林さんです。

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室