みなさんこんにちは、ゲイブルです。今日は投稿ブログを紹介します!
2月21日から26日まで木版画のグループ展が行われました。一般の人たちにも親しみやすい木版画ですが、出品者のどの作品も魅力的な現代のテーマとともに、高度な技術によって制作されていました。その中で宮本承司さんの作品は異彩を放っていました。宮本さんの作品は画面中央にアボカドを真ん中で切り双方の断面を描いています。 握りすしや上にわさびを乗せたサイコロステーキなど食べ物をテーマにし制作されており、その背景は具体的イメージは描かれておらずほぼ無彩色や一定の色彩に統一されていました。最初の印象は「なんてユーモラスな版画であろうか」と惹きつけられました。
すしの作品は、一見したら食べ物のすしだと分かりますが、シャリの部分は、抽象化された曲線で閉じられその内側に一部透過するような白色によりそれを表現しています。上に乗っているすしネタも一部半透明で裸眼では見えるはずのないシャリとそのまた向こう側まで透過して見せています。それにより不思議な浮遊感と平坦な存在感が感じ取れます。
サイコロステーキ作品は、木版特有のやさしい色彩感覚に加え奇妙に膨らんだお肉の側面の描写が観者の共通感覚に訴えかけてくるようで、宮本さんは対象を如何に細かく分析しているかが理解できます。
この作品で気になるのは、背景を描かないということにあります。本来背景は、イメージの社会的位置関係の説明という大きな役割があります。たとえば、おすしの作品の背景に、お皿に乗りくるくる回る様子が描かれる場合とカウンター越しにすし職人とでは社会的意味が異なってきます。これは絵画の歴史では、エドワール・マネ「笛を吹く少年」の作品が、背景を描かなかったことで、センセーショナルな事になりました。 今回の作品はユーモラスでほほえましい感じがするのは、背景をなくした食べ物イメージが、現代アートの文脈の見え方により、キャラクター的にも見えてしまうことにあるのではないかと思いました。 それにしても宮本さんのセンスと技術力には感心させられました。報告 加藤隆明 芸術計画学科講師
|