2020年1月15日

黄光男さん 人権教育特別講演会

毎年開催している、人権教育特別講演会。
今回は、元ハンセン病患者家族訴訟原告団副団長の黄光男(ファングァンナム)さんにお越しいただきました!


ハンセン病」とは、かつては「らい病」と呼ばれた病気で、抗酸菌の「らい菌」によって引き起こされる皮膚や末梢神経の感染症。
炎症を起こし、知覚の鈍麻や麻痺で汗が出なくなったり、熱や痛みを感じなくなります。
現在の日本では毎年数名の新規患者の発生にとどまっている病気で、薬で治り、感染力も弱く隔離の必要は全くありません。

しかし、過去には患者等に対する謂れのない差別や偏見が存在しました。
古くは日本書紀や今昔物語集にも記述があり、この病気に罹った人は、ひっそりと世の中から隠れて暮らしていたそうです。
1900年代にはハンセン病は恐ろしい伝染病だと考えられ、「癩予防ニ関スル件」(1907年)によって患者の収容が始まりました。
その後も「癩予防法」(1931年)・「らい予防法」(1953年)といった法律に引き継がれ、1996年に廃止されるまでの実に89年間、患者たちを一般社会から隔離する政策が進められていたのです。


黄さんは、ご両親やご兄弟がハンセン病に罹患して、幼い頃に家族と離れて暮らすことを余儀なくされました。
当時、ハンセン病が発覚すると療養所へ強硬に勧奨され、家に消毒液をかけられたり、断種手術も行われたそうです。
それは、誤った情報がもたらした形でした。
患者だけではなく、法によってそれらを執行しなければならなかった職員も被害者だと、黄さんは話されました。

黄さんは小学3年生の時に退所した家族と一緒に暮らすことになりましたが、幼少期の大切な時間を共にできませんでした。
今も、故郷にいる家族や親類が拒絶して、帰る機会を持てないまま療養所で歳を重ねている方々がいらっしゃいます。
療養所の入所者は、昨年の記録で1216名、平均年齢は85.9歳だそうです。


力を持った者の言うことを鵜呑みにせず、『おかしいことはおかしい』と声を上げる勇気を持つ
この日、黄さんが学生たちに一番伝えたいことだとおっしゃいました。

黄さんたちは、ハンセン病患者に対する国の誤った隔離政策で差別を受け、家族の離散などを強いられたとして、元患者の家族561人で損害賠償と謝罪を求めて集団訴訟を提起。
昨年2019年11月15日の判決で、ハンセン病元患者の家族に対して、1人あたり最大180万円の保証金を支給する補償法と、名誉回復のための改正ハンセン病問題基本法が可決、成立しました。


「万引き犯を説得するように、差別に対して説得するのも当たり前な社会になってほしい」とつぶやかれた黄さん。
ギターを手に、自身が作詞作曲した「閉じ込められた生命」「思いよ とどけ」、そして日本民謡「ふるさと」と朝鮮民謡「アリラン」の弾き語りを披露していただきました。
黄さんが長い間胸に閉じ込めていた思いが、とても心に刺さる歌詞でした。


貴重なご講演を、ありがとうございました。

 

投稿:島田(学生課)