2015年4月7日

橋川昇平展(F08)ギャラリー檜plus  3/2- 7

展覧会場に提示されたテキスト(虚構化器官Ⅶ)を一部引用する。
―気象庁が公開している東京の過去55年分の気象データと画廊内に設置されたセンサーが読み取った気温・湿度・気圧のデータからリアルタイムに映像と音を作っている。皮膚から感覚すること、記憶と照らし合わせること、記憶すること、予測すること。センサーが感知すること、データ化すること、データを検索すること。この作品はヒトと機械をオーバーラップさせることで、そういった当たり前すぎて見失ってしまうヒトの認知の力を視覚化・聴覚化する。そして、そう感覚する力がヒトに備わっていることがヒトと機械が高度に融合しうる可能性を示すと考え制作した。-

ギャラリーがある東京周辺の過去の気象データとセンサーで読み取ったその時その場の情報を一定のアルゴリズムでリアルタイムに変換し、色彩と抽象形態に視覚化し一部の情報は音として同時に体験できる。作品は色彩豊かで軽やかに展開し音は視覚イメージとシンクロしていることが分かる。ワイヤーフレームは映像の中に仮想立体空間を想起させ、またある場面では背景となる多彩な色面に一定の円が心地よくゆれ動く。映像全体が弧を描き変化し続けたり、縦の色面が3柱現れたりと光が作りだす色彩の透明感が伝わり、奇妙な視聴覚体験ができる。

気温・湿度・気圧という皮膚感覚により見出される世界を、過去のデータとのリンクにより個人的気分から共有の環境世界へと繋がる経験をさせてくれ、「今・ここに」が多くのデータの層と予知という想像のリンクする場所に基礎づけられたものであることが理解できた。

報告 教養課程講師 加藤隆明 協力 芸術計画学科合同研究室