2014年8月14日

館 勝生展 (美術学科87年度卒) ギャラリー白  5/19-/31

44歳で亡くなられた館さんの企画展である。
ギャラリーには制作年が異なる3作品が展示してあった。
この展示空間は100号キャンバス6点以上の平面作品を展示することが可能である。
しかし、小品を入れて3点での展示は、作品との関係が濃密に体験できる場となっていた。

 

群青色を上から下に垂れるように太い筆で引き、それを背景にキャンバスに置かれた絵具の塊に筆を入れ、素早いストロークで画面に痕跡を作り出す。
そのストロークは翅のある昆虫のようなイメージを浮かび上がらせる。
背景とイメージを切り分けようとする線は昆虫頭部に見えるストロークとは異なり慎重な筆の動きを見せる。

 

背景と同じような直線的ストロークで描き出された色面は、慎重な筆の痕跡によって面を分けられる。
絵具の量により画面の質が異なる。
ヌルッとした絵具の質感と薄く溶かれた絵具による滲みの面、その交差により生まれる視覚効果。

 

キャンバス地そのものが背景にあり、飛び散る滲みの斑と素早く動き回るストロークの痕跡で構成された絵画。
ストロークと斑点により翅のある生命体のようにも見えるが、この作品に私は、抽象的形態と具象的形態が入れ替わり続けるさまを見た。
子供の絵に身体行為から偶然描かれたイメージを、途中から「知っているもの」との関連で名づけながら描くことがある。
館氏の絵画には、描くことの原初の体験を見ているように思えた。

報告 教養課程講師 加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室