このギャラリーは、京都のモダンなビル内にあるギャラリーで、個性的で癖のある展示空間を持っている。ここで1992年から作品を発表しているのが西尾さんである。西尾さんは一貫して塩を素材に制作してきた。
作品は一つ一つが手のひらサイズの彫刻である。その作品に近づくと塩の結晶のような塊の表情が見える。一見白く半透明な状態から柔らかさが伝わってくるが、近づくと鋭角な面を持つ鉱物の表情が現われる。その鉱物が重なり合い彫刻になっている。鑑者と作品の距離の違いで作品の印象は一変する。
素材が塩で制作されているということで奇妙な感触になる。塩を素材とするアーティストも存在するがさほど多くはない。そのため作品の鑑賞には少々戸惑うだろう。素材が画材店にはなく食料品店にあることだ。塩を食品として経験している私たちが、作品を視覚体験した時に、身近な素材に鑑者は何を思うかそしてその作品をどのように感じ取れるかである。
日常生活にある塩はほぼ料理のためにある。あまりにも日常過ぎて見えなくなっていた素材に新たな形を与えることで、塩と人間の精神的繋がりが生まれてきているのではないか。
今回の展覧会は「幽霊会議 a ghost conference」とタイトルが付けられている。色々想像ができるタイトルだ。作品自体が白く浮かび上がり表面を光が乱反射し実体が分かりにくい、私たちの社会では死と塩の関連も強い等。しかしその会議とは何なのか。その謎が楽しめる展覧会であったと思う。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室