2013年4月27日

瀧本晋作展 (大学院修士課程修了06卒) 番画廊

瀧本晋作展さん(大学院修士課程修了06卒)の個展が、昨年9月24日から29日まで、ギャラリー番画廊にて行われました。

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ギャラリー空間には、ピカソのキュビズム彫刻やジョナサン・ボロフスキーのインスタレーション作品を彷彿とする人物イメージの彫刻が数体展示してありました。現代において彫刻の素材の多様性は当然でありますが、この人物像を構成しているのは、PPパネル(プラスチックダンボール)という素材です。この素材はホームセンターなどで手に入れられる安価で身近な素材で、特に彫刻作品用の素材ではありません。現在のアート作品は、私達の身近な日用品などで造形や彫刻が制作されています。

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この素材は大理石や樹木や鉄など長期間に渡る耐久性はなく、野外にも適しているとは思えません。また、素材そのものの崇高性とは異なる複製で大量生産された工業製品なのです。このような素材を人型の部位にカッターナイフ等で切断し、互いに嵌め込みながら立体化していくように作られています。あたかも簡易なおもちゃのような制作方法が見えます。

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そのような素材と方法で制作された人型彫刻ですが、表面が青色の作品の横に同じ構造をしている非常に小さな作品がならべられています。1つは2mを越える像であり1つは手のひらに乗るような大きさです。彫刻の要素として大きさは重要です。まず自らの体の大きさが基本となり、その比較で作品の印象も変わります。私の体よりはるかに大きなイメージからは尊厳や恐怖などの感情が沸き、小さければいとおしさやあいらしさが生まれてくると思います。現実に在る彫刻は常に私の体との関係で享受していくものです。
 
安価で弱弱しい素材と構造で制作されたこの「現代人」に、私達は何を見る事ができるのでしょうか。
       
           
                    

報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室