堤展子さん(工芸学科82卒)の個展が4月18日から23日まで行なわれました。
今回は、子供とイカやコイをイメージした陶器の作品です。イカやコイと戯れる小さな子供の様子に、ほのぼのとした牧歌的イメージや昔話に出てくるような場面を思い出します。
子供の成長を願う土着の人形のようでもありました。私がこの作品たちを民衆的風景に見えたり牧歌的なものに感じるのは、元気で無邪気な裸の子供たちが、植物や動物たちと楽しそうに遊んでいるからです。
しかし、なぜイカなのでしょうか。コイと子供の関係は節句や物語としても知られています。食物は豊作の喜びとして理解できますが、この巨大イカと子供の遊戯には意外な面白さは感じても、しっくり腑に落ちるものではありませんでした。
そこで作品が持つ物語性より造形性に注目してみると面白い事に気がつきました。イカも子供の陶器作品にも作者の手の痕跡がイメージとなっていました。手足の短い幼児体型の子供は、作者の手の内から制作される形を大事にしている事が分かります。特にイカの目より上部にある胴には作者の手の握りしめた痕跡がそのままイメージの表面となっているようでした。
制作方法を追体験し想像してみると、まず子供を制作するには大きさの関係で指を丹念に動かし体の部位を、そして表情を作らなくてはいけません。イカやコイにも指先の作業はありますが、それ以上に手の内で作られていることが作品の重要な要素になっていると思います。作者の手のひらの内から作品が生まれてくるようでした。
会場には子供たちの至福の世界が作られていました。
報告 加藤隆明教養課程講師 協力 芸術計画学科研究室
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