2010年12月14日

その目はとらえる 図書館所蔵品展「画家の眼差し ~写生帖」より

 

 写生と聞くと、子供の頃、真っ白なスケッチブックに校庭の木々や草花を無心になって描いた日のことを思い出しませんか。

狩野晴皐(? ~1867)筆  異国渡り禽鳥写生図 江戸時代後期
狩野晴皐(? ~1867)筆  異国渡り禽鳥写生図 江戸時代後期
 今回ご紹介する図書館所蔵品展「画家の眼差し ~写生帖」は、江戸時代中期から明治にかけて、狩野派の画家が中心となり人や動物、昆虫、植物など日常的に目に映るものを写生して描いた作品が綴られています。写生帖、それ自体を一堂に並べて鑑賞していただくのは初めてのこと。本展示を企画された本学教養課程の田中敏雄教授は、絵画制作の基となる「写生」に注目し、写生が近代美術史における絵画法として確立されたこと、そして、その後の広がりを紹介されています。

                                         
                                         奥村耕仙(生没不詳)筆 写生帖 明治27年(1894)
奥村耕仙(生没不詳)筆 写生帖 明治27年(1894)

 教授によると「写生は描く対象を熟視して迅速に、且つまた正確・精密に描写することを意味する。写生したものをもとにして本画を描く。我が国では絵画制作は写生をせずに粉本(手本)を臨模することによることが多かった。(略)」すなわち、手本を模倣した写生から、対象物を的確に捉え、生命のある写実を始め広めたのが圓山応挙であると解説されています。現代風に言い換えれば、応挙によってリアルをスケッチする写生法が日本絵画の世界に一大ムーブメントを引き起こしたと言うべきでしょうか。

                                              
                                                                                 
菊池契月(1879~1955)筆 武具図粉本帳交
菊池契月(1879~1955)筆 武具図粉本帳交

写生帖を見ていると、細かいディテールも妥協しない厳しい目と、いきものへの深い愛情をたたえた目が作品の向こうに見えてきます。
形式にとらわれず、ありのままの姿を描く写生。画家の目はその内奥にある本質に注がれていたように思われます。絵を観に来た人は、画家の眼差しが写しとった「美のかたち」に思わず惹きこまれていました。

たくさんの方にご覧頂くことが出来ました!

 教授がテーマに掲げた画家の眼差し、その先にあるものを思い描くことで、皆さんも日常のリアルを美のかたちに表現する糸口を探ってみて下さい。
同時に、子どもの頃のスケッチの時間を追体験しながら、写生帖を楽しんでもらえれば幸いです。

 

貴重な作品を見ることが出来る機会でした!

 本展示は終了しましたが、大阪芸術大学図書館では貴重資料の展示をはじめ、本学で学ぶ未来のアーティストの作品展を開催して、学生が制作し発表する場をつくっています。
コンセプトは”アートライブラリー”。学生たちに身近にアートを吸収して、新しい可能性や創造力をつけてもらうことをねらいとしています。
 今後も新しい大学図書館を展開していきますので、普段、図書館を利用するすべての利用者、更には芸術に興味のある高校生の皆さんも、本学図書館の情報発信にご注目ください。


「画家の眼差し ~ 写生帖」
 平成22年9月8日(水)~10月9日(土) *展示は終了しています。
図書館4階展示コーナー       

http://www.osaka-geidai.ac.jp/library/exhibition/100908_exhibition.html