大阪・千里の万博記念公園では「未来記憶圏からの目覚め・夏」と題したアートプロジェクトが行われました。
このアートプロジェクトでは、かつて日本のエネルギーが集結したこの万博記念公園を 「日本でいちばん未来を夢見た場所」と位置付け、“未来記憶圏”と名付けました。 8月8日、9日の2日間、この“未来記憶圏”にはさまざまな世代が一緒になって 「次代が担うべき新しい夢」を紡ぐための空間が用意されました。 制作は「大阪芸術大学万博公園アートプロジェクトコミッティ」。 映像制作スタッフなど30名を越える在校生・卒業生で構成されています。 まもなく日が沈もうとする夕暮れの中、最寄り駅から万博公園に向かって続く人の波。 会場となった自然文化園「太陽の広場」は今か今かとカメラを構える多くの観衆で賑わっていました。 お父さんに抱っこされて訳もわからず太陽の塔を見ている子供から、立派な三脚でカメラを構えた老夫婦。 老若男女。世代を超えた吸引力を持つ太陽の塔のパワーをさらに増幅させるイベントの始まりでした。 「はじめて太陽の塔に出会ったその感覚を身体に記憶する<夏>」。 今回のアートプロジェクトのテーマはずばり『太陽の塔と私』です。 太陽の塔に出会ったときの感覚を直接、太陽の塔に伝えてみよう!という仕掛けが用意されていました。 19:00を過ぎまだ明るさが残る夜空の下、MCの方からメッセージの送信についてレクチャーがありました。 当日会場で発表された2次元バーコードを使い携帯電話からメッセージを送ります。 送信された言葉はほぼリアルタイムに太陽の塔へ投影される仕組みになっています。 ・・・当時の万博を知る人は、そのころを思い出して「久しぶり」。 ・・・今日、はじめて出会った人は新鮮な気持ちで「はじめまして」。 太陽の塔に宛てたそんな語りかけるようなメッセージの例が紹介されました。 物言わぬ彫刻に、語りかけるようにメッセージを送る。 「UFOを呼ぼう!」ではないけれど、何か不思議なことが起きはしないか?そんなワクワク感のある仕掛けです。 (※ この動画メッセージ配信サービス((株)デジモン社の【モジメッセ】)は世界発導入なのだとか。) 会場には他にも“生命の音”を太陽の塔に共鳴させるサウンドパフォーマンスも行われていました。 アーティスト・吉川豊人氏(グラインドオーケストラ主宰)を中心とした「太陽の塔×めざましどけい」という パフォーマンスです。まるで古代の火祭りを思わせる力強いパーカッションのリズムと吉川氏のシャウト。
「めざめよっ! 40年の眠りからっ! Wake Up!」 太陽の塔に投影されたモーショングラフィックスは私にとって「未来」や「超常現象」のイメージ。 「昼間見る太陽の塔からは信じがたいその風景は、この力強いサウンドが作り出した幻想なのかもしれない。」 そんな妄想は時空を超えて、未だ見ぬ時間に思いを馳せます。 太陽の塔に語りかけられた言葉が投影され始めました。 『お母さんから あなたのことは よく聞いています』 『頭のアンテナは何ですか?』 『はじめましてなんだけど はじめましての気がしない』 『夜、光っちゃうなんて 反則です』 『スランプ抜け出したい 力を貸してください』 太陽の塔とコミュニケーションしようとすると、彼(太陽の塔)はこんなにも身近な存在になり決して過去の物ではありません。 この観衆参加型の仕掛けによって「未来記憶圏」に居合わせた人々が太陽の塔に注目します。 名前も、住んでいる場所も知らない他人同士が同じものを見つめ、同じ時間をここで過ごします。 これぞアートの持つ力なのか。アートイベントの意味や楽しみをあらためて確認することができる空間でした。 万博記念公園という個性的な場所。その土地の声を聞き、その固有性を手がかりとし、 クオリティの高い映像表現と太陽の塔だけでなく見ている観衆の身体にまで響く打楽器のリズム、 メッセージ性。そのすべてが相俟って、 2009年の、今の、この場所にふさわしい素敵なアートプロジェクトに仕上がっていました。
ちなみに太陽の塔に語りかけたメッセージには、イベント終了後、太陽の塔から返信があるそうです。 このアートプロジェクトは夏と冬の二つの季節をつないで展開されるそうで、 冬のプロジェクトは12月20日(日)-24日(木)に開催予定です。 次はどんな仕上がりになるのか、今から期待大です。 投稿者:教務課 |