2008年4月25日

夾竹桃の箱

美術学科の先生に確認したいことがありまして、21号館へ。今日のブログは「Gallery 5F」です。以前のブログでも紹介しましたが、美術学科には廊下を利用したギャラリーがあります。

日常的に作品を発表する場として作られた「Gallery 5F」の新年度1回目の展示は副手の刀川昇平さんの作品です。新年度に入って学年が変わり、美術学科の皆さんの作業スペースも引越しが完了しています。そこで、美術学科の学生さんに刺激になればということと、「このギャラリーをこんな風に使っていいんだよ」というのを知ってもらうために今回の展示を企画されたそうです。
Gallery 5F 21号館 美術学科
展示されているのは『夾竹桃の箱』というタイトルの作品です。高さ2メートルぐらいの位置に据え付けられた箱には植物の種子が丁寧に描かれています。以前、美術学科の先生方が中心になって『種子展』という展覧会が開かれました。この種子は、その『種子展』のころから高田先生がコレクションしていたものをわけてもらってモチーフにしたそうです。
Gallery 5F 21号館 美術学科
箱からは金属製のアームが横に延び、アームの先から真下にテグスが足元まで下りています。その先には紡錘形の黒と白の立体が吊り下げられていて、更にその立体の下に盛られた塩。なんとも不思議な作品です。
Gallery 5F 21号館 美術学科
黒と白の立体の材質は木。上部の黒はバーナーで焦がして黒を出し、下部の白は何度も塩水につけて再結晶させて白を出しています。不思議なのは単に形だけではなく、音もなくかすかに揺れているからでしょうか?地面が揺れているのか、自分が揺れているのか?盛塩とこの立体の間に何か化学反応のような力が生まれているのか?人か通るたびに動かされる空気のせいか?
Gallery 5F 21号館 美術学科
作品は4つあり、それぞれに盛られている塩も違うのだそうです。伯方の塩、いわきの塩、鳴門の塩、沖縄の塩。刀川さんのこだわりの部分です。

箱に描かれている種子は「夾竹桃」(きょうちくとう)という植物の種子です。この夾竹桃は広島に原爆が投下された後、大地にこの種子が舞い下り焼け野原になった土地を復活させたといわれる、とても逞しい植物だそうです。刀川さんは広島生まれの広島育ち。お名前の「刀川」という苗字も広島に由来するそうです。そんな話を聞いて自分の中で何かが繋がったような感じがしました。
Gallery 5F 21号館 美術学科
種は「単なる種」というだけでなく、こうして作品の中に存在する時に作者の深い深い思いと共に新たな別の価値に生まれかわっているんだな、そんなことをジワジワと感じました。自由に鑑賞して自由に感じればいいっていう場合もありますが、作家さんとお話して、話の中に登場する何気ないキーワードが作品に込められた作家の思いに近づけてくれこともあります。この作品をはじめ見たときに「不思議な作品だなぁ」としか感じなかったものが、こうも変わるか!と思うほどの変わり様。鑑賞って深いです。

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