みなさん、突然ですがセーラー服の歌人・鳥居さんという方をご存知でしょうか?
鳥居さんは、両親の離婚や母の自殺、児童養護施設での虐待、不登校、そしてホームレス生活など、過酷な子ども時代を歩まれてきました。
独学で文字と短歌を学び、2012年に全国短歌大会に入選。
2013年に掌編小説で路上文学賞を受賞、2014年には中城ふみ子賞候補作に。
そして2015年、新聞に寄稿した短歌がインターネット上で取り上げられ、多数の「いいね」やリツイートが相次いで話題となりました。
そんな鳥居さんが7月29日(金)、大阪芸術大学に来学!
「君たちのなかの<鳥居>を探せ」と題した特別講演が開かれました。
一体どんな方なのか…?どうしてセーラー服を着ているのか?-私は、お会いする前からずっと気になっていました。
学生たちの前に現れた鳥居さんは、辛い過去を経験したことなど感じさせない明るい第一印象。
「義務教育」を「料理のフルコース」に例えられ、自分の境遇を話されました。
日本の子どもには9年間、義務教育というフルコースが振舞われます。
美味しいものもあれば、口に合わない苦手なものもあるでしょうし、中には食べたくなくなって途中で席を立つ人もいるでしょう。
しかし鳥居さんは、最初からフルコースの前にすら座らせてもらえなかったのだと言います。
義務教育を受けていなければ、みんなが当たり前だと思っていることすら知らないし、文字が書けなかったり、お金の計算ができなかったりします。
そして同じように教育が受けられなかった人が、実は日本にたくさんいることも伝えられました。
そんな鳥居さんは、”何らかの事情で義務教育を受けられなかった人のための学校”である「夜間中学校」の存在を知り、入学を希望しました。
しかし、書類上は義務教育を終えたことになっており、入学を断られたそうです。
このように、実際には学校に通っていないのに、書類の上でだけ卒業していることを理由に夜間中学校にも通えなかった人たちは60年以上も前からいて、ずっと解決されていない社会問題の一つでした。
鳥居さんは、この問題を訴えるための書類を作成し人々に呼びかけたそうですが、なかなか話を聞いてくれる人はいなかったようです。
やがて、鳥居さんは短歌を書いて賞を取り、メディアで取り上げられるようになりました。
メディアに出る時にはセーラー服を着ることを心がけた鳥居さん。
すると記者の方が必ず、「なぜセーラー服を着ているの?」と質問してくるのだそうです。
「チラシを配っても誰も興味を示してくれなかったのに、私がセーラー服を着ることで、向こうから質問をしてきて、私の話を聞いてくれる。
私は義務教育の拡充を訴える一環として、セーラー服を着ているんです」
そんな鳥居さんの活動が実り、昨年7月、文部科学省の通達によって、幅広くさまざまな事情を抱えた人々が夜間中学校に入学できるようになりました。
「芸術活動に取り組むみなさんなら、こんな経験があるのではないでしょうか?
絵を描いて何になる?文章を書いて何になる?踊って何になる?芸術表現なんて、遊びじゃないの?…って言われたことはありませんか。
私も、歌を書いていて、何になるのと言われることがあります。
でも私には”何になる?”という問いに、はっきりとした答えがあります。
私は、歌を書いたことによって、国を動かすことができました」
後半は舞台芸術学科教授の山本健翔先生とのトークセッションも行われました。
鳥居さんが書く歌は、目の前での母の死や、虐待の経験を詠んだものが多く、壮絶で壮大な出来事をたった三十一文字という短い言葉の中に綺麗に収めて表現されています。
一つの歌を聞くだけで、その情景がぱっと浮かんできて、まるで映画のワンシーンを観たような感覚になりました。
また、大阪芸術大学の学生で結成された「河南短歌会」の会員が、「私が好きな鳥居さんの歌」を読み上げて紹介。
歌から感じた感想なども話されました。
さらに、舞台芸術学科の卒業生が鳥居さんの歌をダンスで表現したり、
歌をモチーフに衣裳を作ったり、
絵画でも表現されました。
講演の終わりに、文芸学科長の長谷川郁夫先生が、
「これからも、鳥居さんの歌を題材に色んな学科とコラボレーションしたいと思っている。
大阪芸大には色んなことを得意分野にしている人がたくさん集まっているから、みんなで何かを作ればすごいものができるじゃないかと考えている。
君たちの心の中を叩いたらどんな音が鳴るか?ピアニッシモ(非常に弱い音)を作品にして表現してほしい」
と述べられました。
今後、鳥居さんとのコラボでどんな芸術表現が生まれるのでしょうか…?
9月11日(日)の大阪芸術大学オープンキャンパスでも、鳥居さんが来学予定!
詳細は、追って掲載いたします。
投稿:島田(企画広報部事務室)