2015年1月6日

杉山卓朗展 -Loop-(美術専門学校2005年卒)ASYL(元梅香堂) 12/6-1/11

針金のように折れ曲がった幅のある線が複雑に重なり合う画面。緊張感のある隙がないとも思える線の構成が鑑者の視線を引きつける。作品を読み取ろうとしても思考できない。イメージはただただ網膜上で留まり、思考の場へとは行かせてくれない。画面上を視線が漂えない強硬な絵画である。
一見ふわふわしているイメージの配列が、高度な技術によりまったく動きを感じないように構築されている。
観者の身体が動けなくなるような絵画空間、何がそうさせているのかを考える。


杉山氏のデビュー作品を2007年東京銀座のギャラリーで見た。画面いっぱいに幾何学形態が組み合わせてあり、個々に平坦な着彩をしてあった。色彩と幾何学形態の構成により建築的イメージが生まれていた。
しかし今回初めて面から線にそして背景となるべき空間が明確になっていた。


今までとは異なる針金のような線はどこから来たのかを杉山氏に聞く。
過去の作品から描かれた幾何学形態の一部を線とし切り離し、画面上に再配置したものである。つまり今回の作品は過去に制作された作品が基礎にあるのだ。自身の過去へのコミット、現在の作品は過去の直線状にあるのではなく、それは複雑に絡み合い過去でもあり現在でもあるのだと思えた。


色彩と形態の配列にはどの部分も均質に配置されており、中心を感じないばかりか有機的な形態を配列しなが
ら画面の時間は停止しているのである。これが観者の身体や視線を動かせなくしている要因だと思えた。

報告 教養課程講師 加藤隆明 協力 芸術計画学科研究室