9月3日から始まっている「田村正樹 展」に行ってきました。 田村さんは本学の卒業生で、大学院修了後、本学の“藝術研究所”の助手として勤務されていた時もありました。大阪での個展は4年ぶり。しばらくお会いしていなかったので、ご本人には個展に行くことは事前に伝えず「サプライズの再会」を企てたつもりが、個展に顔を出す情報はどこからか田村さんの耳に入っていたようです。待ち構えられていた感じは、こっちの方がサプライズでした。 >>>田村正樹ホームページ 現在、長尾谷高等学校と大阪市立南高等学校で非常勤講師をされており、初日には生徒さんや関係者の方がたくさん詰めかけ賑わったそうです。今回行ったのは「楓ギャラリー」。
武家屋敷の建物の門をくぐり、丁寧に手入れされたお庭を右手に数段の石の階段を下ります。作品を見る前に気持ちが清々しくなります。ホントに素敵なギャラリーです。
今回、大小合わせ14点の作品が展示されています。その中でも「Genesis」という一番新しい作品は圧巻です。高さ194cm×幅521cm。圧倒的な存在感です。写真を撮影させてもらう際「じゃぁ、私がタバコ代わりにっ!」と田村さんが作品の傍に立ってくれました(スイマセン、やっぱりフレームに収まりきりませんでした)。
これまでは淡い色の陶芸作品を思わせるような「癒し系」の作品が多かったのですが、一転して何か強いものが伝わってくる作品です。この作品は夏の炎天下の中、熱中症にならぬよう時には頭から水をかぶりながら制作されたのだそうです。キャンバスを何度も立てたりねかせたりしながら描き重ねたのだとか。一人で大変な作業だったと思います。そこまでしてこの作品を仕上げるためには、きっと大きな衝動が田村さんの中にあったのだと思い、お話を聞いてみました。
最近は「時間」とか「輪廻」などをテーマに作品を作られているそうで、廻る時間の中で再び生まれてくるときの力のようなものを表現していこうとされているそうです。「胎動」という言葉が当てはまるようで、混沌とした中にも他からの圧力に屈せず蓄えられていくエネルギーのような思いを今回の作品にも込められたそうです。 「キレイとか、美しいとか醜いとか、明るいとか暗いとか、そんな価値観を超えたものを表現したくて」と、私がこの言葉を聞いたときの田村さんは、自分の内側にある「衝動」を言葉で表現するために少し早い口調になりました。セリフのように用意されていた言葉ではなかったことがわかり「本物感」が伝わってきました。 田村さんの作品は胡粉(日本画で使われる白の顔料)にアクリル絵具を混ぜて描かれます。最大の特徴はそれに加えて和紙を使った表現です。絵具として使う和紙の効果は多彩で、重層することで絵具の表情に変化が生まれます。胡粉の混ぜ方で表面の素材感が変わったり、絵具の落とし方、乾燥のスピード、和紙の透け具合などによって、小さな作品でも部分部分は様々な表情です。この方法は大学在学中に、辻司先生のアドバイスを受けながら確立してこられたものでこれまで一貫してこの方法で作品を作られてきたそうです。
私は抽象画を見るのが得意ではありません。得意とか苦手だとかそういう言うものではないのかもしれませんが、毎回なんとなく挑戦するような構えをしてしまします。「何も感じなかったらどうしよう」と、そんな思いも少しあり。一方で「自分が感じたことが全てで、それでいい」って思うことがあったり。でも完全ではなくても少し作家の思い近づけたかな、って思えるときのちょっとした安心感も自分には心地良かったり・・・。今回もその安心感がありました。 うん、それでいい、それでいい・・・。
●田村正樹 展 2008年9月3日(水)→9月14日(日) 月曜休廊 12:00→19:00 ※最終日17:00まで 楓ギャラりーにて
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