今日は芸術情報センター展示ホールで行われていた「博物館実習」を見学させていただきました。今回の実習は第二期の実習生達。再来週は第三期、9月には通信教育部生の実習と、この夏だけで80名以上の学芸員課程履修者の博物館実習が予定されているそうです。 実習は8月8日のスタートから今日で第5日目、最終日です。これまで作品の保存、取り扱いについての講義や収蔵庫の見学、額装の実習などのプログラムを消化し本日はいよいよ展示実習です。(ちなみに学部生と通信教育生では実習のプログラムが少し違うそうです。)
歴史資料や工芸品などの立体物を展示するグループと額装された作品を展示する2グループに分かれ、それぞれの展示について実践的な技術指導が行われました。
立体物は座面形状や安定性、表面加工の状態、保存状態、どう見せたいかなどによって展示方法が異なります。一つ一つのものに対して作品を慎重かつ丁寧に扱いながら展示台に固定していきます。キャプションなどの作成ももちろん実習内容に含まれていて、作品解説のプレートは200字という制限の中でわかりやすく作品の魅力を伝える文章を作成する難しさを感じた実習生もいたようです。
また額装された作品の展示では、縦長、横長の作品をどう組み合わせるのか、展示する高さはどうするか、どんな順番で見せるのか、どうグルーピングするのかなど、グループで十分に話し合ってから大まかなレイアウトが決められ、その後、展示フック(ワイヤー)で吊って固定していく作業が進められました。
展示が終わると一旦、全員が会場の外に出て次は「観覧者」の視点をあらためて体験します。
村上先生が館長さんになった想定で「本日はご来館いただきましてありがとうございます」その挨拶で実習生の表情が少し和み、順に自分達がつくった展示空間に入場します。
会場をひと回りしたあと実習生達は自分達が展示した空間を思い思いに写真に撮っていました。
実習を終えた学生さんたちからは、 ・「いつも何気なく見に行っている展覧会なども自分が経験してみると、展示空間を作るには計画性や企画力や多大な技術力などを必要としているということが良くわかった」 ・「小さな展示空間を作るときであっても、他の人の意見を聞き、自分とは違う考え方を理解して計画を練っていくなど一人で作るものではないんだということを体験でき、結構大変だと感じた」 ・「学芸員のお仕事で必要な知識の幅の広さに驚いた」 ・「体力勝負だと思った」 ・「いままでは観る視点、作品を作る視点は経験があったけれど、今回『見せる側の視点』を経験してその難しさを感じた」 ・「何をどう展示するか以前にコミュニケーション能力がいかに大切かを痛感した」 など、実習生の皆さんにとって有意義だったことを感じられる感想ばかりでした。
田中先生からは「学芸員のお仕事は何年も先のことを考えたり、色々な角度から物事を見て考えなければならない。でもそこが学芸員の苦しみでもあり楽しみでもあるんです」とおっしゃっていました。博物館事務室のスタッフの方からは「作品をとにかく丁寧に扱うこと」と「展示作業中の事故を防ぐためにも声を出し合ってコミュニケーションしていくこと」が強調されるなど、基本的だけれどとても大切なアドバイスがありました。
その後、博物館事務室のスタッフの方によって照明の色温度や照度など少し難しいお話も含め、展示用の照明器具の特性を紹介するデモンストレーションが行われました。照明で展示そのものが変わります。照明の作業はいわゆる「仕上げ」だと思っていましたが、照明器具の落下などを想定して先に大まかに照明配置してから展示作業を行う場合もあるとのこと。短い時間でしたが内容充実のデモでした。
「整列させればそれでよし」、なんてそんな考えを持っている人は甘い。甘すぎます。「どう見せるか」の技術や考え方は表現を学ぶ「芸術大学生」にとって必須です。この博物館実習で学ぶ内容は芸術大学出身者としての今後の人生に絶対役に立はずだ!って感じました。 私の大好きな作家さんから最近いただいたメールにあった一言です。 『見てくれる人あっての作品ですから。』
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