本日から南船場のフォトギャラリー「Nadar OSAKA」で始まった井上尚美さんの写真展『一期一会』に行ってきました。井上尚美さんは本学の映像学科の卒業生です。 ちょうど5年前から「HOLGA」(ホルガ)というカメラで写真を撮りはじめられ、その後写真教室にも通われたようです。2年前に「ホルガエキスポ」なるものに参加され、その後グループ展、企画展などで作品を発表されています。会場には約20点の作品が展示されています。
今回の写真展のコンセプトシートをご紹介します。 —————————————————————————- 今あるものが、10年後も同じようにそこにあるとは限らない。 なくしてしまってから大切なものに気付いて後悔するよりも、 今あるものを精一杯大切にしていくべきであるというコンセプトのもと、 HOLGAで写真を撮っています。 今回の作品は、幼い頃によく行った母の故郷淡路島のお正月の写真です。 震災の後から、そこにあった景色は随分と変わってしまいました。 しかし、流れる時間や、風習や、そこに住む人々の気持ちは あの頃と変わらず、今もあり続けています。 変わらずそこにあるうちは、その一瞬一瞬を精一杯大切にしていきたいと思うのです。 (Nadarホームページより転用) —————————————————————————-
何気ない日常を撮影した写真なのですが、井上さんの目を通じて切り取られた淡路島のお正月が「HOLGA」によって味わい深い光景に映っています。真っ青な空もくすんで紺青(こんじょう)に映るように少し色褪せた8ミリフィルムの記録映像の部分部分を見ているようで、はじめてみるのに郷愁の思いがする作品です。
「HOLGA」の良さはいわゆる「低忠実性」といわれ、撮影者の意図とは違う思わぬ効果が写真に現れるところが魅力です。「ケラレ」(写真のエッジ部分、特に四隅が暗くなる)というものやブレたような歪みなどが生まれることからトイカメラのような独特の魅力が生まれます。刷ってみないと出来栄えのわからない「版画」のような愉しみがありますね。 →ウィキペディア「HOLGA」
井上さんの一枚一枚の写真が「記憶の中の風景」のように見えるのも、その「HOLGA」ならではのケラレによるものだと思います。例えば目を閉じてある風景を思い出す時、そのイメージの端の部分は写真のような長方形の境界はないはずです。 ホルガで撮影された作品に作家の感性が映し出されているのなら、心の中を覗くようです。私は会場の左奥に展示してあった写真の前に一番長い時間いたように思います。遠くに映っている静かな海が印象的な写真でした。
本日伺ったギャラリー「Nadar」で、「HOLGA」カメラのことについてスタッフの方にお話を伺ったのですが、その方は思いがけず本学・写真学科の卒業生でした。わざわざカメラの中を見せて「この部分がロクロク(6×6)というサイズになっているので正方形の画像が撮影されます」と、とても丁寧にご説明くださいました。橋本大和さん、お話ありがとうございました。 ちなみに「Nadar」のオーナーの方も本学・写真学科卒業なのだそうです。(「Nadar」ホームページにはスタッフの方のブログもあります。)
● 井上尚美 写真展 『一期一会』 8月19日(火)→8月24日(日) open 11:00→close 19:00 フォトギャラリー「Nadar OSAKA」にて
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